今、新宿のK'cinemaで公開中の監督の作品、拝見してまいりました。
朝10時から見るのはずっしりとした本格作品でした。
失礼ながらワークショップから起こしたとは思えない出来です。
兄妹役の若手俳優さん方は「初々しさ」でカバーしてた感がありましたが、監督の演出はさすが!でした。
本職の役者(笑)としてのコメントは
主役の大塚まさじさん。
フォークソングのミュージシャンでいらして演技経験はないそうです。でも・・・、いや、だからこそ、ズルい!
このなんにもしなさ加減! 存在感!
終演後、谷口監督ともお話したのですが、その魅力は素晴らしい。
役者はやはり「何かしたがる」のです。私自身も、つい「演じてしまう」自分と戦います。
それがないのです。ホントに、ただそこにいるだけでカメラが追いかけてしまう・・・。
ああ、そんな演技、したい!!!
娘役の上西 愛理さん。
初めての演技だそうです。そうは見えない。
これは、谷口監督の腕・・・ですかね!
この家族の皆さんの雰囲気がホントによかったです。きっと上西さんはとても素直な方で
、自然に乗っていったのかもしれません。
いずれにしても、最近よく思うのですが、役者の演技技術より大切な「好感度」があります。「お客さんに愛されるか否か」
この映画の出演者たちはみんな、お客さんに愛される人々でした。
家族を捨てた不甲斐ないお父さんも、どこか憎めない・・・。
ダンナをなじるお母さんも、一生懸命で、旦那さんを愛していて、その存在が切なかった。
お父さんに似ているだろう、優柔不断さが前面ににじみ出るお兄ちゃんも、優しさが溢れていて・・・。
お嫁に行く妹も、お母さんのことが心配でならない、両親が元通りになって欲しい気持ちがとてもよく現れていて・・・。
いい家族でした。
観客としては、
「家族」ってどう捉えてもホントに重いですね。
「父のこころ」なのですが、父も母も息子も娘も「こころ」を描かれています。
9年前、父親の借金が原因で崩壊した家族の再生のドラマですが、夫婦は結局離婚します。
だったら再生ってなんだろう。何の再生だろう・・・。
「家族」であっても「夫婦」であっても、なんであっても人間同士は、形ではないお互いの関係が大事なんでしょう。
離婚して夫婦関係は解消しても、9年間、止まったままだった「時間」は動き出す。
戸籍は解消して離れて暮らしても、「関係」はまた違う形で始まった。
そういう再生もある・・・。
ベタな言い方ですが、「形」より大切な実質がある・・・ってことでしょうか。
その家族のそれぞれに「がんばってね」と言いたくなり、「いや、私だよ、頑張るのは!」と一人ツッコミをいたしました。
新宿のK'cinemaで7/4(金)まで公開中。連日10:30です!
ぜひ、足をお運びください。
息子・宏志役の古賀 勇希さんが、自主舞台挨拶を毎日行っていらっしゃいます。
演技同様、好感度たっぷりの拙さが魅力ですよ!
柚木佑美